遺産分割協議

「遺産分割協議」とは、遺産を分ける際に、相続人全員で相談した協議内容を書類に残す事です。
遺産分割する際の注意事項としては、
・必ず相続人全員で行う事
・相続人に未成年者がいる場合は代理人も参加する。
モデルケース 1
父Aが亡くなり、その相続人は、妻B、長男C、長女Dという相続が発生しました。
遺産は、父Aが妻Bと二人で生活していた不動産(評価額5000万円)、銀行の預金1000万円、信用金庫の預金が500万円です。
一方で、父Aには消費者金融から借りた500万円の負債があります。
遺言は無く、妻B・長男C・長女Dの間には相続についての大きな争いがありません。
妻B・長男C・長女Dの間で、不動産は妻B、銀行の預金は長男C、信用金庫の預金は長女Dがそれぞれ取得し、妻Bは長女Dに対して代償金として500万円を支払うことになりました。
消費者金融からの借金は妻Bが返済していくことになりました。

【遺産の内訳】
① 不動産(評価額5000万円)
② 銀行の預金1000万円
③ 信用金庫の預金500万円
④ 消費者金融から借りた500万円(負債)
⑤ 妻B→長女Dに代償金として500万円
モデルケースを基にした解説
1. 遺言書がある場合
父親であるAが遺言を残していれば、原則として遺言書通りの相続になります。
(この場合でも遺留分が問題になることがありますが、遺留分については、別ページをご覧ください)。
2. 遺産分割協議書の作成
相続人間で大きな争いがない場合や話し合いで解決した場合には、遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議書には、どの財産をどの相続人が相続するのか記載し、相続人全員で署名押印します。
※一般的には実印で押印し、印鑑証明を付します。
民法には法定相続割合が示されていますが、相続人間での合意があれば法定相続割合と異なる遺産分割協議書を作成してかまいません。
※モデルケースでも、本来の法定相続割合は、妻Bが50%、長男Cと長女Dがそれぞれ25%ずつということになりますが、BCD間では妻Bが50%以上を取得する遺産分割協議が成立しています。
3. 銀行預金
従来、銀行預金は遺産分割の対象外とされてきましたが、平成28年12月19日の最高裁決定はこれを変更して遺産分割の対象にするという判断をしました。
その結果、遺産分割協議書や相続人全員の合意がなければ銀行預金を解約することは困難になってきています。
一方で令和元年7月から、原則として銀行預金については150万円を上限として法定相続分の3分の1を遺産分割協議なしに払戻しできるようになりました。
4. 代償金
モデルケースでは妻Bが代償金として長女Dに対して500万円を支払う約束をしています。
相続人間での公平を図るために、多くの資産を引き継いだ相続人が、少ない相続人に対して代償金を払うということが行われています。

5. 借金
相続は父Aの権利義務を全体として承継することになるので、相続人BCDは資産だけでなく負債も相続することになります。
負債として代表的なものは借金です。
モデルケースでは妻Bが借金の返済をしていくことになりました。
それでは消費者金融から長男Cや長女Dに対して借金返済の請求が来た場合、長男Cと長女Dは「妻Bが支払うことになっている」と主張して支払いを免れることはできるでしょうか?
基本的には支払いを免れることはできません。
可分債務については相続開始と同時に相続割合に応じて共同相続人が当然に分割された債務を引き継ぐことになるからです。
500万円の借金を妻Bが返済するという遺産分割協議書は、BCD間では効力を有するとしても、消費者金融との関係では妻Bが250万円、長男Cと長女Dが125万円ずつ返済する義務を負うことになります。
借金が多額で資産が少ないために遺産分割するメリットがない場合には、相続放棄という手続があります。
詳しくは別ページにて解説していますが、相続放棄には期間制限がありますので、速やかに方針を決める必要があります。
弁護士に依頼するメリット
1. 遺産分割に際して、最初に検討する方法は遺産分割協議です。
遺産分割協議がまとまらない場合に遺産分割調停に進むことになります。
ですから、遺産分割協議を弁護士に依頼すれば、遺産分割協議の際に、「どこが合意できて」「どこが合意できないのか」が明らかになりますので、遺産分割調停に比較的スムーズに入れる可能性があります。
2. 遺産分割協議が成立した場合、遺産分割協議書を作成することになります。
不動産登記や銀行手続にも遺産分割協議書を利用することになります。また、相続額が大きくなることがあり、後から紛争が起きないようにしっかりと記載する必要があります。
遺産分割協議を弁護士に依頼すれば、遺産分割協議書案も弁護士が作成しますので、紛争の再燃を予防できます。