相続に関する民法改正がされ、平成31年1月13日から段階的に施行されています。
この改正では、
①配偶者居住権の新設
②婚姻期間が20年以上の夫婦間における居住用不動産の贈与等に関する優遇措置
③預貯金の払戻し制度の創設
④自筆証書遺言の方式緩和
⑤法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設
⑥遺留分制度の見直し
⑦特別の寄与の制度の創設
がされました。
④については平成31年1月13日に、②③⑥⑦については令和元年7月1日に施行されています。
本日現在で未施行なのは、①の配偶者居住権に関する部分と⑤の法務局における自筆証書遺言の保管制度に関する部分です。配偶者居住権については令和2年4月1日から施行、法務局における自筆証書遺言の保管制度については令和2年7月10日から施行になります。
さて、配偶者居住権は、配偶者が居住していた建物の全部または一部を無償で使用・収益できる権利です。これまでは配偶者が居住建物を取得する場合には、他の財産を受け取れなくなる可能性がありましたが、配偶者居住権の新設により、配偶者は、終身または一定期間、被相続人が所有しこれまで居住していた建物に無償で住み続けることができ、従前だと他の財産を取得できないケースでも取得できるようになる可能性も出てきます。
相続人が妻と子で遺産が自宅(2000万円の価値)、預貯金(1000万円)の場合を例にとって説明します。
これまでは、妻が自宅をとりたいという場合、妻が2000万円の価値を有する自宅を取得し、子が1000万円の預貯金を取得した上で、妻が子に対し500万円の代償金を支払うというのが一般的だったと思います。この例で妻が子に支払う500万円を持っていない場合には、自宅取得を諦めざるを得ないケースもありました。
ところが、配偶者居住権が認められ、仮に配偶者居住権の価値が1000万円、負担付き所有権の価値が1000万円であるとした場合は、妻が1000万円の配偶者居住権を取得し、子が1000万円の負担付き居住権を取得し、預貯金は500万円ずつ分けるという遺産分割も可能になります。
配偶者居住権の制度の新設により、これまでの居住環境での生活を継続する選択肢が増え、相続人全員の利益になる遺産分割の実現が期待されます。